昆虫類のプラズマローゲンの定量と乾燥ストレスに対するその役割の検討
昆虫類のプラズマローゲンの定量と乾燥ストレスに対するその役割の検討
批准号:
22924010
负责人:
中原 雄一
金额:
$0.36万
依托单位:
依托单位国家:
日本
项目类别:
Grant-in-Aid for Encouragement of Scientists
财政年份:
2010
资助国家:
日本
项目状态:
已结题
起止时间:
2010 至 --
中文摘要
ネムリユスリカは体内の自由水を全て失った状態で生命活動を停止し、吸水すると再び活動を開始できる。この驚異的な現象をアンヒドロビオシスと言う。乾燥に耐えるためには、様々な生化学的、物理化学的機構が複合的に関わっているが、その一つとして、乾燥に伴って発生する活性酸素を除去する能力が高いことが挙げられる。プラズマローゲンはグリセロリン脂質のサブクラスの一つで、sn-1位のビニルエーテル結合のラジカル補足能による抗酸化作用が知られており、ネムリユスリカの乾燥耐性に重要な役割を担っている可能性がある。そこで、乾燥状態と活動状態のネムリユスリカ幼虫のプラズマローゲンを定性、定量し、比較した。まず、全リン脂質中に占めるプラズマローゲンの割合は、乾燥幼虫(約6.7%)と活動幼虫(約6.17%)の間に差はなかった。この結果は、乾燥の過程で発生する活性酸素によりプラズマローゲンのビニルエーテル結合が切断され、結果としてプラズマローゲンの量が減少するであろうという予測に反する。現時点では確たることは言えないが、ネムリユスリカは、活性酸素による損失分を補償するだけのプラズマローゲンを乾燥する過程で予め合成していたのかもしれない。あるいは、別の抗酸化機構により細胞膜の酸化が抑制されているのかもしれない。次に、分子種に着目してみると、乾燥幼虫、活動幼虫共に、エタノールアミンプラズマローゲンとセリンプラズマローゲンが主要な分子種で、コリンプラズマローゲンはわずかであった。乾燥幼虫では、活動幼虫に比べてセリン型が減少し(11.8%vs.2.5%)、エタノールアミン型が増加していた(4.8%vs.35%)。哺乳類の組織では、エタノールアミン型がほとんどで、コリン型がわずかに存在し、セリン型はほとんど検出されない。また、今回同時に調査したアワヨトウやトノサマバッタでも、哺乳類と同様に、セリン型はわずかしか検出できなかった。今後、セリンプラズマローゲンがネムリユスリカに特異的なものかどうか明らかにするために、他種のユスリカや、ショウジョウバエなど他のハエ目昆虫のプラズマローゲンについても調査する必要があるだろう。従来、昆虫には、プラズマローゲンがあったとしてもわずかしか存在しない、と言われてきた。しかし今回の調査で、哺乳類に比べて割合は低いものの、昆虫の体内にも十分な量のプラズマローゲンが存在することが明らかとなった。
英文摘要
ネムリユスリカは体内の自由水を全て失った状態で生命活動を停止し、吸水すると再び活動を開始できる。この驚異的な現象をアンヒドロビオシスと言う。乾燥に耐えるためには、様々な生化学的、物理化学的機構が複合的に関わっているが、その一つとして、乾燥に伴って発生する活性酸素を除去する能力が高いことが挙げられる。プラズマローゲンはグリセロリン脂質のサブクラスの一つで、sn-1位のビニルエーテル結合のラジカル補足能による抗酸化作用が知られており、ネムリユスリカの乾燥耐性に重要な役割を担っている可能性がある。そこで、乾燥状態と活動状態のネムリユスリカ幼虫のプラズマローゲンを定性、定量し、比較した。まず、全リン脂質中に占めるプラズマローゲンの割合は、乾燥幼虫(約6.7%)と活動幼虫(約6.17%)の間に差はなかった。この結果は、乾燥の過程で発生する活性酸素によりプラズマローゲンのビニルエーテル結合が切断され、結果としてプラズマローゲンの量が減少するであろうという予測に反する。現時点では確たることは言えないが、ネムリユスリカは、活性酸素による損失分を補償するだけのプラズマローゲンを乾燥する過程で予め合成していたのかもしれない。あるいは、別の抗酸化機構により細胞膜の酸化が抑制されているのかもしれない。次に、分子種に着目してみると、乾燥幼虫、活動幼虫共に、エタノールアミンプラズマローゲンとセリンプラズマローゲンが主要な分子種で、コリンプラズマローゲンはわずかであった。乾燥幼虫では、活動幼虫に比べてセリン型が減少し(11.8%vs.2.5%)、エタノールアミン型が増加していた(4.8%vs.35%)。哺乳類の組織では、エタノールアミン型がほとんどで、コリン型がわずかに存在し、セリン型はほとんど検出されない。また、今回同時に調査したアワヨトウやトノサマバッタでも、哺乳類と同様に、セリン型はわずかしか検出できなかった。今後、セリンプラズマローゲンがネムリユスリカに特異的なものかどうか明らかにするために、他種のユスリカや、ショウジョウバエなど他のハエ目昆虫のプラズマローゲンについても調査する必要があるだろう。従来、昆虫には、プラズマローゲンがあったとしてもわずかしか存在しない、と言われてきた。しかし今回の調査で、哺乳類に比べて割合は低いものの、昆虫の体内にも十分な量のプラズマローゲンが存在することが明らかとなった。
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